はじめに
前置きとなるが、ここから示す内容は私見である。しかし、その私見は国内外の胸郭の研究者が紐解いた胸郭の運動学的な機能の見地についての書籍を熟読した上で、そこからさらに現代の肋骨周辺の胸郭の機能低下の変遷までを示した完全オリジナルな内容となっている。この内容を真実と捉えるかは個々人の判断に任せるが、その歴史的背景からトラブルが生じるキッカケについて、かなり厳密に記載してみた。この教科書作成の取り組みが多くの方々に広まり、現代の健康トラブルの多くの要因となっているリブフレアについて考えるきっかけになれば幸いである。
疫学的視点
昨今、姿勢に対する意識の高まりにて、テレビや各種SNSなどでさまざまな情報発信がされています。その多くの内容は巻き肩や円背姿勢などの丸まったフォルムに対する修正論である。
その修正論を行う方々や増えてきたことによって、逆に丸まった姿勢から反り過ぎた姿勢によるトラブルに問題が顕在化してきています。「肋骨パカーン」や「肋骨の盛り上がり」、「リブフレア」などの問題はその影響を受けて生じてきたトラブルの結果であり、背中が丸まった場合では問題視されなかった肋骨下部の開きが現代社会で問題となってきている。
そのリブフレアは美の視点では、くびれが見えにくいなどの理由から修正すべきと論じられることとなり、後を追いかけるようにリブフレアに対してもSNSなどにてアプローチ方法などについて発信が多く行われるようになってきている。
この問題視しているリブフレアは美の視点から語られることが多いため、男性より女性向けに情報発信されているきらいがあり、男性より女性にリブフレアを問題視する傾向が強まっていると感じる。
今まででもそうであるが、その問題に対して間違えた修正論にて国民が運動や介入を行うようにことで、後追い的に整形外科に、その運動実施による問題を抱えてしまった方が来院される流れとなってきていると思う。
このコラムは、そんな負のスパイラルを断ち切るために、姿勢に意識にて現在、どのような問題が生じているか、また間違った意識の是正、それによるトラブルが生じないようにするための視点を含んだ解説をしていきたいと思います。
病 態
リブフレアとは肋骨が開いている状態を示す用語である。このリブフレアの概念としては肋骨の開きである胸骨下角の拡大していることが問題であるにも関わらず、さまざまな状況をリブフレアと解釈しているきらいがあるため、一度その状況について整理していく必要がある。下部肋骨が美の視点などで目立ちやすい理由を機能解剖学的視点で捉えると「下部肋骨の外旋」、「下部肋骨の後方回旋」、「肋骨の前方偏位」、「肋骨の過拡張」などの状況があり、それが混じり合った形で存在していると考えられる。真のリブフレアである「肋骨の外旋による胸骨下角の拡大」はその一部ではあるが、本コラムでは他の要因の理解を含めて理解を促す目的で全ての問題は病態として分類して解説していく。
1.リブバックワードローテーションタイプ(肋骨後方回旋型)
現在の姿勢の意識の仕方によって一番、多くなっているタイプはこの型ではないかと考えている。このタイプは肋骨の後方回旋によって肋骨が拡張して目立つようになったタイプである。肋骨の後方回旋とは深呼吸で空気を肺に取り込む際に生じる動きであり、一般的に通常で行われる動きである。しかし、現在では姿勢を良く見せようとするために、本来は胸椎は軽度後弯するのが通常にも関わらず、背中が丸いとよろしくないとの発想が蔓延しているため、人為的な意識であったり、ポールなどを用いて胸椎を伸展させるような運動を行ったりすることで、胸椎の伸展を伴いながらの肋骨が後方回旋位を常時取り続けた姿勢となっている。肋骨の後方回旋は胸郭を硬くする性質を持つため、後方回旋にて肋骨が前後に張り出して引っ込みにくくなるため、肋骨の持ち上がりが定常として目立つ構造が生み出されてしまうため注意が必要であると考える。
2.リブシフトタイプ(肋骨の前方偏位型)
次に述べるのは、リブシフトタイプである。これはお尻をキレイに見せようとする流れの中で目立ってきたタイプと考えている。「お尻をキレイに」このパワーワードが、美の視点で世に溢れていると感じている。ヒップアップさせようとするこの流れは本来、大臀筋などの筋肉を活性化させて、その結果、筋肉の張りを伴いながらお尻周りの皮膚が引き上がることが望ましい。それにも関わらず、安易にヒップアップを目指そうと補正下着にて皮膚や皮下脂肪を強制的に持ち上げたり、お尻の位置を解剖学的に高い位置に見せようとして、腰椎前弯と骨盤前傾動作を用いて、お尻を上に突き上げた姿勢を取るパターンが横行している。お尻を持ち上げようとする意識による骨盤の前傾で留まればいいのだが、その意識をさらにエスカレートしていくと腰椎の前弯だけでは動きとして足りなくなるために、今回挙げる肋骨の前方偏位を引き起こすことで、さらにお尻を持ち上げるような運動パターンを行なわせているのである。ヒップアップを得られる代償として、肋骨の前方偏位が生じた結果、骨盤の位置に対して肋骨は前方に位置するようになるために、反り腰を伴った肋骨の出っ張りが生じて、その修正のために躍起になっている。これが2つ目に挙げるタイプのメカニズムと考えている。
3.リブフレアタイプ(真のリブフレアである肋骨外旋型)
そして、本来のリブフレアである胸骨下角の拡大を伴った肋骨外旋型について述べる。胸骨下角は一般的には90度以下が望ましいと言われている。しかし、これもまた姿勢の意識の間違えによって、肋骨外旋を過度に引き起こしているケースが後を立たない。この問題は美の視点での女性だけに留まらず、男性でも多く生じている問題で、巻き型に対する間違えた姿勢修正に伴って生じているタイプとなる。この問題を改善していくために、まず巻き肩についての認識を変えていく必要がある。大前提であるが、基本的には肩は30度ほど巻いている姿勢が通常であることを頭に入れていただきたいと思う。肩甲骨の角度を示す角度として肩甲棘の角度があるが、この正常角度は30度とされている。どういうことかと言うと、肩甲骨は通常、正面に対して30度、内側に巻き込んで位置するのが正常であることを表しており、肩が前にあるのは人が身体の前での活動が多いため、また四足歩行であった名残としてなど、さまざまな要因で効率的に身体活動を行うために望ましいのである。それにも関わらず、現代社会では肩こりになりやすい、肩を痛めやすい、美しくないなどの理由に肩甲骨を身体と並行にさせるような意識が横行しているのである。
日整会の関節可動域表示ならび測定法では肩甲帯の伸展は20度が参考可動域となっている。これは肩甲骨だけでは身体と肩甲骨を並行までにできないことを示しているのですが、それにも関わらず肩甲骨を並行に近づけようとする意識が後を立たないのである。肩甲骨をさらに寄せようとすると、肩甲骨だけでは達成できないため、今回の問題である肋骨の外旋を生じさせることで肩甲骨を寄せているのである。ヒップアップ同様、エスカレートした間違えた意識がこのような結果をもたらしている代表ケースとなっている。肩甲骨周囲の柔軟性が低下したままにも関わらず、巻き肩を修正しようとすると肋骨外旋にて対応する。そのような形で得られた肩甲骨の位置では、胸郭に対する肩甲骨の位置は、さほど変わらないため肩へのストレスが軽減しないため、負担が軽減しないケースが散見される。また医学的にも床面に対する肩峰距離は近づくことが望ましいとするきらいがあり、その結果、たとえ肋骨の外旋でも達成していればよいなどといったミスリードが生じていると考えられる。何度も述べるが、立っている姿勢では肩甲骨は30度前方に巻くのは正常である。その前提は忘れずに、肩甲帯の前後20度ずつの合わせて40度の可動域は確保しておくことが重要である。
では、真のリブフレアタイプはどのような動作パターンになっているかと言うと、姿勢修正する時に肩甲骨や背骨を動かすのではなく、肋骨の前側を拡げるようにして動かしている。脊柱や肩甲骨の柔軟性が低下していると、そこを動かす身体意識を持ちにくくなるため、その代償として動かしているケースが多いと考えられる。
そして男性に多いタイプとしては、胸板を厚く見せようとして肋骨外旋位を取ろうしてリブフレアを作り出しているケースである。ベンチプレスなど大胸筋を鍛える時に肩甲骨を寄せて姿勢を取ろうとする方が多いが、先ほど述べたように肩甲帯が後方に動ける可動範囲は20度である。それ以上の寄せる意識は肋骨の外旋を惹起することとなる。その肋骨の外旋位は肋骨を張り出すことで胸板が厚く見せる作用があることで男性は体格をよく見せるため、女性はバストアップされているような状況を擬似的に作り出すために、取っているケースが後を立たないのである。
では、なぜ肋骨の外旋はいけないのか、美的な視点では肋骨の開きはくびれが出にくくとされている。しかし、本来くびれとは骨格に対してお腹の肉の部分がスッキリしている状態で生じるものである。それにも関わらず、下部肋骨を強制的に締め付けるように腹斜筋などで押さえつけたりすると内臓などの臓器には圧迫負荷が加わり、骨盤内臓器に圧迫負荷が生じて膀胱などに負荷がかかっていると考えられる。また、その下にかかるエネルギーは骨盤の拡大させることにつながり、Form closureとかたちで本来、骨盤輪の安定化させているが、機能低下が生じていくと考えられる。しかし、ここでも美的観点では下部肋骨が閉じた状態に対して骨盤は拡大した状況となるので、それが理想的なくびれであると誤認されることにより、種々のトラブルを招いていると考えられる。そのようなトラブルが生じないようにするため、下部肋骨を閉じつつも、骨盤内も圧力を高めるように腹横筋や骨盤底筋を収縮させて安定させている場合に関しては、そのエネルギーは上部肋骨へ波及していると考えられる。そのようなケースでは、肩幅が拡大するような胸郭形態になっていると考えている。この肩幅拡大も身体に種々の影響を引き起こすが今回のテーマとは外れてしまうため、またの機会で述べるとする。本題に戻るが、なぜ肋骨の外旋はいけないのかであるが、基本的には胸骨下角が90度付近であれば、そこが本来のニュートラルゾーンであるために、過剰に肋骨を内旋もしくは内方化させてしまうことは上記の理由で好ましくないのである。そして、肋骨の過度な外旋は肩甲骨に対する間違えた意識によってもたらされていることが多いと考えられる。そして肋骨の過度な外旋は腹斜筋や腹横筋の前方線維が伸張された状態となっている。筋肉が過度に伸張されている状態では筋収縮は引き起こしにくいとされており、それによって体幹機能が低下することが最大の問題と考えている。この問題は筋肥大を目的とするトレーニングを習慣化させている方々に多く認める問題である。先ほど述べたように体格を良く見せようとする場合、肋骨を外旋させて胸郭を大きくすることは見た目の視点で、かなり有効と考えられている。そのため、ボディービルなどを主戦場としている人などは、肋骨はかなり外旋傾向である。しかし、この肋骨外旋位は先ほど述べたように体幹の機能低下をもたらすため、体幹を自身の力で適切な腹圧をかけることが難しくなる。そのため、そのような問題を抱えた方はトレーニング時などに腹部にベルトを付け、強く締める形で外から陽圧をかけることで安定性を高めようとしているのである。また、この陽圧は結果として腹部臓器に圧迫をかけることにより、そのエネルギーは胸腔内臓器を上に押し上げる力となり、そのエネルギーは上部肋骨を拡張させて体格をよく見せる効果をもたらすため、相乗効果的にボディビルダーが理想としている姿勢をもたらすわけだが、種々の機能低下をもたらすことは言うまでもないのである。さらに、トレーニングの経過時間が長くなれば、筋の微細損傷の繰り返しにより、筋の柔軟性は損なわれていくが、それに対してストレッチを適切に行っていない場合、ベンチプレスを行っているような方は大胸筋の柔軟性が低下することで大胸筋が伸張されるような肩甲骨を内転させるような動作を行うと大胸筋の起始部である胸骨部の前面を両側方に引っ張る力が加わり、さらに肋骨の外旋は加速していくのである。そのような状況になった場合、肩や肩甲骨の動きの代償として働いていた肋骨の外旋の代償的な可動範囲も限界を迎えることとなり、肩関節に痛みが生じてきやすいと考えられる。
タイプ別の身体トラブル
リブフレアはSNSで多く扱われるだけあって、望ましいものではないとされている。ここでは、そのタイプ別に出やすい身体的トラブルに対して機能解剖学的視点をもとに解説していきたいと思う。
1.リブバックワードローテーションタイプの症状
「首の張り」
このタイプでは肋骨の後方回旋運動の繰り返しにより、それを引き起こすために必要な頚部周囲の筋が繰り返し使われることとなる。そのため、胸鎖乳突筋や肋骨を持ち上げる斜角筋など筋の柔軟性が低下しやすくなったり、筋実質が短縮した位置となる。これらの筋肉が張ることにより頚部の深層部が凝っている感覚になりやすいと考えられる。また、上記の筋肉の影響だけでも振り向くなどの動きが制限されるが、それに加えて肋骨の後方回旋位によって胸郭の剛性が高まってしまう。剛性が高い状態とは肋骨の柔軟性が失われた状態になるため、振り向き時には頭蓋骨、頚椎、さらには肋骨が付着する1〜4番目までの胸椎が関与しやすいとされているが、頚椎は斜角筋由来によって、胸椎は剛性過多によって制限されてしまう。その結果、残る頭蓋骨と上部頚椎の間での運動を余儀なくされるため、後頭部の筋肉まで張ってきてしまうため、全体的に張ってしまう状況まで進展してしまうのである。
「呼吸への影響」
次に呼吸への影響であるが、肋骨の後方回旋とは息を吸い切った時の肋骨の動きである。そのため、吸った状態で姿勢を固めていると、今後は息を吐く側の動きが困難となる。息を吐ききれなくなると肺の内部は過膨張となりやすく、横隔膜が下がるような横隔膜の平低化が生じて、ますます胸郭は広がり、かつ横隔膜による腹圧を高める機能が低下するのではないかと考えている。
「腰の張り」
そして次に腰への影響であるが、肋骨の後方回旋は先述したように胸郭の剛性を高めてしまう。その結果、体幹の回旋動作は本来、胸郭エリアをサポートする胸椎が回旋の主体とされているが、ここでの回旋関与率が低下してしまうため、回旋の主体が腰部に切り替わってしまう。その結果、腰部の関節負担は増大して腰の張りなどにつながりやすいと考えられる。若年期で、このような姿勢の場合は腰の疲労骨折などにもなりやすいのではないかと個人としては考えている。
「背中の張り」
背中の張りに関しては肋骨の後方回旋位では、胸椎伸展位が引き起こされやすいが、この状態は脊柱起立筋が縮こまった状態である。それが常時、続くと筋の柔軟性も乏しくなってくると考えれらる。それによる日常生活への影響として、座った姿勢で背中を丸めるようなシチュエーションで影響が出やすいと考えられる。背部の縮こまった筋肉が背中を丸めることで伸張されるため、柔軟性が乏しい状況で、さらに伸張されることで筋内への血液供給量が低下することで、発痛物質が蓄積してくると考えられる。その状況は徐々に進行してくるため、長時間座っていると背部が血液循環量の低下に伴い重くなってきて、さらにエスカレートすると発痛物質の蓄積によって痛みに変わり、その痛みの範囲も広範囲に広がってくるのが特徴的と考えている。一時的に肩甲骨を動かすなどして、循環の確保を図ろうとするが、肩甲骨を動かす筋肉と肋骨後方回旋を引き起こす背部の筋肉は別物であるため、一時的には症状が緩和した感じになるかと思うが、すぐ戻ってしまうと考えられる。そして、さらにそのような環境が続いてくると血行不良の背部領域は拡大して脊柱周囲だけでなく、他の背部の筋との滑走不良を招き、万歳した状態から手を上にさらに伸ばすなどの動きが制限されてしまい、肩関節へのトラブルまでに進展していると考えている。肩を患う人に腰痛が多いのは、このメカニズムが影響しているのではないかと個人的には捉えている。
「手のしびれ」
最後に手のしびれへの影響について述べていく。リブバックワードローテーションタイプでの神経へのストレスポイントは大きく2か所存在していると考えている。一つ目は前、中斜角筋の負担増加による神経へのストレスである。肋骨後方回旋位は斜角筋が縮こまった姿勢となる。その状況からリュックを背負ったり、重い手荷物を持ち続けたりすると肩甲骨や肋骨は下に引き下げられるようなストレスが生じる。その結果、縮こまっていた斜角筋が伸張されてしまうと、その間には腕神経叢と呼ばれる神経の束が通過するのだが、そこに圧迫力が加わり、しびれや痛みなどにつながりやすいと考えている。そして二つ目のポイントは小胸筋のエリアである。小胸筋下症候群と呼ばれる病名が存在するのだが、このエリアは神経が走行している中で、圧迫や牽引などにて神経の症状が誘発されやすいエリアとされている。ここで神経がストレス受けるメカニズムであるが、ここでは肋骨が後方回旋にて隆起してくるストレスが影響していると考えている。大胸筋や小胸筋などの筋が胸張ることで伸張されるとその伸張ストレスにて筋は引っ張られて硬くなる。その状況に肋骨の後方回旋による深部からの圧迫が加わると徐々に神経へのストレスが蓄積されて圧迫率が高まってくるとしびれなどに進展しやすいと考えている。しびれや血行不良感を手に感じる場合は要注意である。
2.リブシフトタイプの症状
「腰の重み」
リブシフトタイプでは圧倒的に腰部にストレスが加わっていると考えられる。ストレスのメカニズムは大きく2つの要素に分けられる。まず一つ目はリブがシフトしていることに対する制御するために筋性ストレスである。身体としては前に以降とするものがあれば、それ以上、前に行かないようにするために抗するために筋収縮が引き起こされる。それにも関わらず、自らヒップアップさせようと骨盤前傾を起こそうとするので2重の意味で腰背部の筋性の負担が惹起されていると考えられる。二つ目は腰椎に関わる剪断ストレスの影響である。本来、骨盤と胸郭は一直線上に位置するのが正常であるが、肋骨が前方に偏位すると、そこではズレるストレスが生じることとなる。その結果、椎間板にはズレるストレスが加わり、上下に繋ぐ椎間関節ではズレるストレスが生じる。さらにズレが大きくなれば脊髄や脊髄神経が通る脊柱管もズレにて神経が通る面積が狭小化してくると考えている。現時点、このリブシフトタイプのような姿勢を取る者は若い女性が多いため、画像診断で得られるような変性初見を認めないとは思うが、その影響は20年後に大きなしっぺ返しとして出てくることは医療関係者であれば容易に想像がつくのではないだろうかと思う。
「股関節の詰まり」
次に股関節の詰まりについて、股関節の屈曲は通常、仰向けで寝ている状態で片脚を抱えるようにした際にモモとお腹が付くぐらい曲がるのが正常とされている。しかし、リブシフトタイプではこのような動きが制限されやすくなってくると考えられる。脚を抱える動きでは股関節だけが動いているように考えていると思うが、股関節が曲がる際には股関節では約90度程度の動きで、残るは骨盤や腰椎での動きが必要とされている。そのため、リブシフトのような腰椎を反らせるような前弯が強いタイプの場合は、そこでの動きが制限されて股関節が詰まりやすいと考えられる。リブシフトタイプだが詰まらないと感じられるタイプは、腰椎を動かすことを習慣化させているから詰まらない状態を維持出来ているだけ、基本的には動きは低下しやすいと考えられる。また詰まりはなくても、立ったまま靴下が履きにくいとか、ズボンを履きにくいなど関節可動域の低下を示す所見は日常生活の中で感じているかと思う。
「背中を丸めて座っていられない」
次に上記の内容であるが、リブシフトしているタイプでは背中を丸めて座っているのが苦手となっていると考えられる。肋骨を前方にシフトさせているのを定常状態とさせてしまっているため、そもそも椅子に座っている時は背筋を伸ばすままとなっているか、前に机などがあれば前腕で机に体重を預けながら背部の筋肉を休ませる姿勢を取って座ることが多くなっていると考えられる。そして、この肋骨前方偏位型の人は肋骨は偏位したままで固定されているため、背中と腰を丸めようと思うと腰だけが丸まるような状態になりやすいため、腰が張ってくる感じになりやすい。そのため、丸めて座るのを嫌って常に背筋を伸ばした格好で座ることが多くなるのである。そして、このような姿勢で座るタイプの方がパソコンや机の書類を見ると脊柱全体を丸めて下を向くことが出来ないため、下をむき続けていると首が張ってきてしまうため、集中力の維持が困難になると考えられる。
3.リブフレアタイプの症状
「体幹の機能低下」
リブフレアの最大の特徴は腹圧をかけられないことによる体幹の機能低下と考えている。リブフレアは肋骨の下端部を押さえつける力が低下していることが原因と言われることが多いが、これは発生順序が逆であると考えている。同一者であってもリブをフレアをこちらで誘導した場合と、正常角度に誘導した場合を比較すると明らかに前者の方が体幹の保持機能は低下する。そのため、リブフレアは肋骨を押さえる力が低下した結果生じるものではなく、リブフレアの意識にて自ら作り出していると発生するもので、その結果、体幹機能まで低下してくるが正しい順序であると考えている。
「肩甲骨の内側の詰まり」
前述したが肩甲骨の寄せる意識に対するミスリードでリブフレアは生じやすい。そもそも肩甲骨が寄せていることが多いタイプのため、肩甲骨内側に常に負荷をかけている。肩甲骨の内側にある菱形筋などは常時短縮した状態になるし、脊柱と肩甲骨の間にある神経や血管などは圧迫されている環境となりやすい。その結果、肩甲骨の内側の詰めた状態を繰り返し取ることで詰まり感、さらにエスカレートすると肩甲骨を寄せる際の痛みとして症状を感じることになると考えられる。
「鎖骨周囲の張り」
次に鎖骨周囲の張りの問題であるが、これも肩甲骨を寄せ続けていることで生じるストレスである。肩甲骨を寄せる際には鎖骨の伸展する。鎖骨の伸展とは鎖骨が後ろに行く動きとなるが、この状態が続くと鎖骨と肋骨の距離が近づき、その間を通る神経や血管にストレスが生じる。その結果、血流不足による重い感じや直接的に圧迫による骨同士のストレス、さらに進展すると肋鎖間隙の狭小化によって、しびれの症状に進展しやすいと考えている。鎖骨周囲が張ったり、痛むのを放置せずに、しっかりその要因を捉えることは上記の事柄を防ぐために非常に重要なことと考えられる。
「首の突っ張り」
最後に首の突っ張りであるが、リブシフトタイプの首の張りより強くなりやすいと考えている。このタイプでは肩甲骨を寄せることから生じやすいが、肋骨が外旋しながら肩甲骨を寄せていると肩甲骨を単純な寄せではなく、下がる要素の動きも伴いやすい。肩甲骨を寄せて下げるとそこに付着する筋肉も下側に引っ張られるが、そこから首だけを下に向けると肩甲骨では下側に、頭では前側にと両方を引っ張るような形となるため、その突っ張り感を強固なものとなってしまう。そのため、下を向く作業がもっと辛く感じるのはこのタイプと考えられる。また、肩甲骨を寄せて下げる姿勢は腕神経叢へのストレスが大きくなるとされており、しびれの視点でも好ましくないのである。
自身のタイプの見分け方
タイプ別の症状が分かったところで自身のタイプの見分け方について解説していきたいと思います。シングルタイプとは限らず、マルチに重なる場合もありますが、その場合は両要素が混在して問題となっていると捉えてもらえればと思います。
1.リブバックワードローテーションタイプの見分け方
肋骨を後方回旋させているケースでは肋骨の後方回旋に伴い、胸骨が上方に偏位します。その結果、アゴ先と喉元の距離が近づいてしまいます。通常では、自身の手のひら分ぐらいの距離が空いているのが理想ですが、リブバックワードローテーションタイプでは、第3関節ぐらいまで距離が近づいてしまうのが特徴的です。両方の状況で、身体の捻りやすさを確かめてみてください。明らかに後者の方が身体が捻りにくいことを感じられるかと思います。最近では、このように肋骨がバックワードローテーションしているケースが頻発しているので、当てはまる方も多いかと思います。
次のポイントは胸骨が垂直になっているかどうかです。胸郭の前方にある胸骨は通常、床面に対して垂直に位置しているのが正常となります。しかし、リブバックワードローテーションのタイプで、かつ肋骨下部が出っ張るようなタイプでは胸骨が後傾になってしまいます。胸の前で手の甲を重ね合わせた際に手が床に対して垂直になっていれば正常ですが、リブバックワードローテーションタイプでは手首側が前に出てしまいます。これも同様に両方のパターンで身体を捻ってみてください。手首を突き出せば突き出すほど身体が捻りにくくなることを感じられることかと思います。このように胸骨の後傾も特徴的なサインとなります。
2.リブシフトタイプの見分け方
こちらの記事も作成途中となりますが、興味がある方は、ぜひご覧ください。感想などがあればメッセージもお待ちしております。